父の死亡で相続が発生しました。相続財産は500万円の預貯金と不動産があり、対象者は母と私と弟の3名で不動産には現在母が住んでいます。

私には事業資金の負債があり、返済が滞ってるため相続放棄したいと考えていますが問題が生じますか?例えば債権者から「法廷相続分があるから相続放棄は認めない」と言われる事があるんでしょうか?

「法廷相続分があるから相続放棄は認めない」へのご回答

この場合、詐害行為取消権に該当するかどうかということになります。詐害行為取消権の対象になる行為は財産権を目的とする法律行為であるため相続放棄のような身分行為に基づいて取り消す事は出来ません。

この理由について判例をご紹介します。

相続の放棄のような身分行為については民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。

取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが妥当である。

また、相続の放棄のような身分行為については他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。(最判昭和49年9月20日民集28・6・1202)

「相続放棄と遺産分割協議」での違いについて

同じ身分行為でも共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権行使の対象と判断されていますので判例をご紹介します。

共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。遺産分割協議は相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。(最判平成11年6月11日民集53・53・898)